Tsai型金・ガリウム・テルビウム1/1近似結晶の磁気相図についての特異な解明

東京理科大学先進工学部マテリアル創成工学科の田村隆治教授とFarid Labib研究員、東北大学多元物質科学研究所の那波和宏准教授と佐藤卓教授による共同研究グループが、Tsai型の金・ガリウム・テルビウム(Au-Ga-Tb)1/1近似結晶における磁気相図を作成しました。この結晶では、電子と原子の比率を変えることでエキゾチックな強磁性秩序や反強磁性秩序が現れることが明らかになりました。 研究グループは、準結晶や近似結晶の磁気構造の依存性を理解するため、一軸異方性の大きな磁性元素であるテルビウム(Tb)を導入した近似結晶を作製しました。そして、磁気相図のe/a(電子数と原子数の比)の関数として初めて作成することに成功しました。結果から、非平面渦巻き状の反強磁性秩序と非平面渦巻き状の強磁性秩序が異なるe/a比で基底状態として安定化していることが分かりました。これらの秩序状態においてTbの磁気モーメントの向きが正二十面体に接する方向を向いていることも明らかになりました。 研究者たちは、これらの発見が準結晶や近似結晶の磁気秩序を理解する上での重要な知見であり、将来的には磁気冷凍やスピントロニクスなどへの応用につながる可能性があると期待しています。この研究成果は、「Materials Today Physics」に2023年12月19日にオンライン掲載されました。